ちょっとした事件に・・・・・・いや、ちょっとした、なのかな?とにかく。攘夷派の人たちのテロに巻き込まれかけ、私は真選組の人たちにお世話になる機会があった。
お役所仕事というのは面倒なもので、上層部にいろいろと報告書などを出さねばならないらしく、その度に私も真選組の屯所へお呼ばれした。そのとき、局長の近藤さんに気に入られ(と言うか、あの人は基本的に優しいから、それこそ攘夷派とかでもない限り、誰でも受け入れてくれるんだろう)、それからも何度かお邪魔させていただいた。
それまでは恐い人たちだ、ってイメージが強かったけど、実際に関わってみるとそうでもない。・・・・・・というわけでもないか。優しいのは近藤さん、あとバドミントンに誘ってくれる山崎さん、ぐらいかもしれない。その他一般隊士の方々は、こうして怯えない女が物珍しいのか、一応は構ってくれるけど・・・・・・何より、鬼の副長こと土方さんは、かなり冷たい。無関係の女が屯所に出入りすることが許せないんだろう。・・・・・・まァ、当然だよね。それに、幸いなことに、彼は元々つい人をフォローしてしまう体質があるらしく、何だかんだ言って、私もそこまで咎められたことはない。
・・・・・・というわけで、そこまでは問題ない。そこまでは。私的に最も会いたくないのは・・・・・・一番隊隊長の沖田くん。歳は私より若いはずなのに、妙に威圧感のある子だ。その上、土方さんのように理由があるのならまだしも、彼は無意味に私を責め立てる。・・・・・・と言うか、苛めてくる。
え?何??あの子はドSなの?と思っていたら、そうだったらしい。私を追い返そうとしていた土方さんが、私に同情の眼を向けて教えてくれた。
が。そこまでも実は大した問題じゃない。重要なのは、最も会いたくない沖田くんに対し、うっかりまた会いたいと思ってしまっている自分がいることだ。
え?何??ってドMなの?と思っていたら、そうだったらしい。なんてことは無い。断じて無い。
沖田くんはそれだけじゃないと知ったからだ。見た目は可愛いけど、基本はドS。でも、やっぱり可愛いときがある。近藤さんにも懐いているみたいだし。それに、S故に打たれ弱いしね。・・・・・・そういうところがキュンとくる。
こう言うと、むしろ私もSっぽいんじゃ?と思うけど。それはそうかもしれないので、あえて否定はしない。
「あれ?さんじゃないですかィ。何しに来たんでさァー。」
そして、今日もやって来てしまった屯所。さらには、初っ端に沖田くんに遭遇してしまうという、運の悪さ!・・・・・・いや、あえて運の良さと言い聞かせよう。
当然ながら、その間にも沖田くんは言葉攻めをしてくる。が、まだ耐えられるレベルだったので、サラリと流すことにした。
「さん、アンタ相当ヒマなんですねィ。つい最近もアンタの顔を見たと思うんですけど。」
「ヒマってわけじゃないけど、近藤さんにお呼ばれされてるからね。」
「へえ〜・・・・・・。一体、何の用でィ?」
「恋愛相談・・・・・・とでも言うのかな?近藤さんから、そういうお話を聞くのよ。」
「やっぱ、ヒマなんじゃないですかィ。」
「そんなことないわよ。警察の方に協力するのも、私たち国民の義務でしょう?」
「だったら、俺にも協力してくれませんかねィ・・・・・・?」
沖田くんがニヤリと笑う。・・・・・・これは、嫌な予感しかしない。
「残念だけど。先にお約束してる、近藤さんが優先よ。」
「理由はそれだけですかィ?」
「・・・・・・どういう意味?」
「さん、近藤さんを狙ってるんじゃーないんですかィ?」
その言葉にはすごく殺気が込められてる気がした。
そういえば。沖田くんは、近藤さんに懐いているんだった。だから、近藤さんの恋路を邪魔しようなんていう輩がいれば、切り捨てるつもりなのかもしれない。
・・・・・・まァ、あんな状況で邪魔しようとする人は滅多にいないとは思うけど。当然ながら、私もその一人だ。
「言ったでしょ。私は近藤さんの恋愛相談を聞きに来てるんだ、って。近藤さんが好きなのは、あのお妙さん。私が狙うわけないでしょ?」
「でも、近藤さんは弱ってるときに優しくされると、すぐ落ちるような人なんでさァー。」
「・・・・・・たしかに。でも、大丈夫。近藤さんだって、お妙さんのことは本気よ?私が狙おうったって、振り向いてくれないと思うわ。それに、何より私にそういう気も無いし。」
「もし、それが嘘だったら、俺の命令に全て従ってもらいますよ?」
「いいわよ。もし私が約束を破って、近藤さんを狙うようなことがあれば、沖田くんの言うことを何でも聞くわ。」
「おっと、こうしちゃいられねェ。そうと決まれば、まずは近藤さんの方を嗾けに行かねェと・・・・・・。」
「沖田くん。それはおかしいでしょ?」
少し怒り気味で言っても、沖田くんは一向に気にしていないようだった。それどころか、また強気に言い返してきた。
全く・・・・・・。負けず嫌いと言うか、何と言うか。
「そんなことはありませんゼィ。俺との約束は、さんが近藤さんを狙わないこと。だったら、近藤さんがさんを好きになっても、さんは近藤さんを狙わないのか。それを確かめる必要があるんじゃないですかィ?」
「それはそうかもしれないけど・・・・・・。沖田くん、元の目的忘れてない?」
「元の目的ィ?」
「そう。近藤さんの邪魔をしてほしくなくて、私にそんな確認をしたんでしょ?それなのに、沖田くんが嗾けちゃったら、今度は沖田くんが近藤さんの邪魔をすることになるじゃない。」
「・・・・・・さん。まさか、俺が近藤さんを取られたくなくてさんに嫉妬してる、なんて思ってるんじゃないでしょうねィ?」
「そこまでは思ってないけど。それに近いんじゃない?」
「そんなわけないじゃないですかィ。」
あっさりと否定された。・・・・・・あれ、違った?いや、そうじゃないな。たぶん、沖田くんが素直になれないだけなんだ。そういうとこが可愛いのよね!
って、うっかり褒めちゃった!!けど、口に出したわけじゃないから大丈夫、ってことにしておこう。
「そう?・・・・・・まァ、いいわ。私、そろそろ近藤さんの所に行かないと。」
「待ってくだせェ、さん。まだ話は終わってませんゼィ・・・・・・?」
「何よ。もう特に話すことはないと思うけど?」
「さんの考えが間違ってんなら、俺がどうして邪魔をしたがるのか・・・・・・。本当の理由、知りたくないんですかィ?」
本当の理由・・・・・・?本当に、さっきのは違うって言うの?
「そりゃ、話してくれるなら、聞きたいけど。どうせ教えてくれないんでしょ?」
「そんなことありませんゼィ。」
「ただし条件がありますけど、とか言うんでしょ?その手には乗らないよ。」
「じゃあ、無条件で教えてあげますよ。」
「えっ?!」
そんな・・・・・・。あの沖田くんが無条件で教えてくれるなんて・・・・・・。怪しすぎる。何かあるに違いない!と私は身構えた。
しかも、沖田くんはいつもと違った真剣な表情。一体何が起こるの?!と思っていると・・・・・・。
「俺はアンタに惚れてる。だから、近藤さんと話すのも、他の男と話すのも気に食わない。」
「・・・・・・・・・・・・え、何、それ。新たな苛め?」
「そっちこそ、どういう意味ですかィ。俺に好かれんのが、そんなに嫌ってことですかィ?」
「いやいや!そういうことじゃないけど!」
「じゃあ、嬉しいってことで。」
「いや、そうとも言ってない。」
「どっちなんですかィ。」
だって、急すぎる。自分でも、何だかどっちなのかわからなくなるぐらいに。
・・・・・・あと、単に言いたくないだけってのもある。ほら、惚れたが負け、なんて言われるように、負けたくないもん。
でも、先に言ったのは向こうってことは・・・・・・負けてはいない?
「え〜っと。ちなみに、それは嘘だったりしないわよね?さすがの沖田くんでも。」
「そんなこと言われたら、『さすがの俺でも』傷つきますゼィ?」
「はいはい・・・・・・。とにかく、嘘じゃないのよね?」
「当たり前でさァー。」
「わかったわ。そうね・・・・・・。嬉しいか嬉しくないかは、はっきり言ってわからなくなってる。でも、私も沖田くんのことは好き。」
「じゃ、嬉しいでいいじゃないですかィ。」
「そうは言えない理由、わからない?」
「さんが素直じゃないから。」
「違うっての。・・・・・・まあ、いいわ。とにかく、今日は近藤さんとの約束があるから。」
自分が想っていた相手に告白されて、急に嬉しいと思える冷静さなんて、私には無かったのよ。
それと、もう1つあるけど・・・・・・。どちらにしろ、そんなことを本人に言うわけにはいかず、私はさっさと話題を変えた。
「それを俺が許すとでも・・・・・・?」
「許すも許さないも、約束なんだから仕方ないでしょ。その後とか、別の日とかは、沖田くんに会いに来るから。」
「・・・・・・俺もガキじゃないんで、納得しといてあげますけど。じゃあ、最後に1つだけ質問に答えてくだせェ。」
「何?」
「さんって、SかM、どっちですかィ?」
「・・・・・・。」
「答えてくれるまで、行かせませんゼィ・・・・・・?」
「別に減るものじゃないしね。答えといてあげるわ。・・・・・・残念だけど、私はSだと思う。」
「それは良かった。」
「良かった?自分もSのくせに??」
「そっちの方が調教のし甲斐があるじゃないですかィ。」
黒い笑顔でそう言ってのけた沖田くん。・・・・・・だから、好きと言われても嬉しいとは言えないんだ。こんな奴に好かれたところで、苛められる日々が待っているだけだ。
でも、それに決して屈しない姿を見せて、沖田くんの期待に反したいとは思う。・・・・・・やっぱり、私ってSみたいね。
「それは、こっちにも言えることじゃない?」
「・・・・・・そう言われると、ますます燃えますゼィ。」
「お互い、楽しみね。とにかく、そろそろ近藤さんのところへ行くから。」
「へいへい。」
そうして私がようやく近藤さんのところに行き、いつも通りに話を聞く。・・・・・・と、その途中で沖田くんが乱入してきた。
「さん、まだ近藤さんと話してんですかィ?」
「お、総悟!どうした、お前もさんに話でもあったのか?」
「ええ、俺の女なんで、そろそろ返してもらおうかと思いまして。」
「俺の・・・・・・女ァァァ!!!?一体、いつの間に・・・・・・。いや、そんなことより、・・・・・・そ、それは悪かったな。さん、じゃあ、話はまた今度にでも・・・・・・。」
「いいんですよ、近藤さん。私は今日、近藤さんとお話しに来たんですから。」
「いや、しかし・・・・・・。」
「なんでィ?俺に苛められんのが、そんなに怖いんですかィ・・・・・・?」
「あら、沖田くんこそ。そんなに私に苛められたいの・・・・・・?」
お互い、最高に爽やかににっこり微笑む。
「なるほど・・・・・・。自分から放置プレイを望むとは、健気じゃないですかィ。そういうことなら、あとでたっぷり、可愛がってやらねェと。」
「それじゃ、いい子で待ってるのよ?」
「・・・・・・さんがそこまで言うなら、今ここで羞恥プレイに変更してやりまさァー。」
「沖田くんが弱ってるとこ、近藤さんに見られてもいいなら、それでもいいけど?」
「本当、生意気な女。」
「そっちこそ。」
「(なんで二人とも楽しそうなの!?と言うか、頼むから外でやってくれェェェェェ・・・・・・!!!)」
無茶した!!(←)とにかく、沖田さんの口調が難しすぎます(苦笑)。
blogで「次の更新も日吉夢になるかもしれません。・・・あ、でも、やっぱり書くのが遅いので、意外に別のキャラかもしれません。いっそ、別の漫画かもしれません(←)。」とか書いてたのが、実はこの作品なんですけど・・・もう3年前!!2年前にも「次回は『銀魂』でしょうか。」とか・・・。
そんな努力だけは認めてあげてください(土下座)。
書こうと思ったきっかけは、「S or M?」って台詞を某所で聞いてから、ですね(笑)。
おそらく、そういったネタから、たくさんの方がもっと素敵な沖田夢を書いていらっしゃるとは思いますが(苦笑)。私も書いてみたかったんです!好きなキャラの1人なので!
あと、可哀相な近藤さんも書きたかったんです(笑)。
('13/06/21)